薬剤を焼き付けた、山のような紙の束。
そこへ足を踏み入れたときの私の目は、きっと真円に近かったのだろう。
見上げた途端笑い出す人につられるように笑って、その横へそっと体温を寄せる。
『何?』
『どうしても2枚足りなくて』
『探してたんだ?』
『そう、だって悔しいし』
いつも一緒でいられるのは、この上だけなのに。
呟いた横顔は明るくて、虚構に気付ける自分が誇らしい。
『また焼けばいいよ』
『もう、ヒトゴトみたいに』
笑う。
笑う。
そうあって欲しいと願ったのは、いつの頃だったろう。
引き寄せるには遠すぎて、けれど瞬きの数々は色褪せず。
ああ、蔑まれるのは私だけでよかったのに。
知れぬ程の矮小さ、霊螺子の針。
触れるほどに崩れゆくそれを、ただ只管に、抱き締める。