少しばかり、昔の話を。
当時、私はある月刊誌に連載されていた漫画を愛していた。
主人公の少女が着るエキゾチックなデザインの衣装もそうだったが、何より、スクリーントーンを一片も使わぬその作品全体に漂う、何か禁欲的とすら言える迷いのない雰囲気に心酔しきっていた。
当時私の神経は過ストレスによって危険域にあり、その漫画を読む事だけを生き甲斐に1ヶ月を送っていたと言っても過言ではなかった。
そして数ヶ月経った頃、その漫画は唐突に、理解も納得もできぬエンディングを迎えた。
打ち切りだろうか。それとも作者急病だろうか。
いや、急病ならば休載措置がとられる。
打ち切りにしてももう少し読者にとって納得のいく終わり方をする筈だ。
私は混乱し、落胆した。
それでも次号の発売日には、その雑誌を手にとっていた。
何かその作品についての情報はないかと思った。
そうしてページを繰り、その文字を目にした途端、私は愕然とした。
訃報。
前号の原稿を上げた直後、作者はこの世を去ってしまっていたのだ。
私の父と、同じ死因だった。
あぁ。
徳のある人はやはり最後まで、こんなにも人生に愛されて死んでいくのだ。
もともと体の弱い人だったと、その夭逝の理由を後で知り。
知った私はただその死に方の幸福さのみを、正体の解らぬ神に感謝した。
もう、4年も前の話である。